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2004年03月03日

「たそがれ清兵衛」敗れて悔いなし

山田洋次監督「たそがれ清兵衛」が、先の米アカデミー賞外国映画賞を逸しました。

その報を聞いて、ピグモンの相棒は開口一番、「アメリカ人に清貧の思想なんて理解できないだろう」と呟きました。(二人とも、「たそがれ清兵衛」が、十年に一度の傑作と感じていて、ノミネートされた時は、心から喜んでいたのでした)

確かに、大量生産大量消費の国アメリカで、あの映画のコンセプトが十全に理解されるとは思いがたいかも。劇中、もっとも胸をつくシーンの一つは、下級武士の主人公清兵衛が、朝食時茶碗にこびりついた米を洗うように湯で溶かして飲み干し、さらに漬け物でぬぐいとって食す場面です。それが、少しも惨めでも悲しくもなく、思わず観る側の居ずまいが正されるような品格をもって描かれています。こんなシーンがどこまでストレートに伝わるか、あやしいといえばあやしいですね。

<清貧の思想>は中野孝次の著作からひところ流行った言葉ですが、それが政治的に利用されて、不景気の下忍従を強いる政府の言いぐさみたいになってしまった感があります。しかし、本来は皮肉なことに、消費社会の物質主義と拮抗する、反骨の思想なのかもしれません。

「たそがれ清兵衛」の主人公井口清兵衛は、幕末の庄内、海坂藩のお蔵役五十石の平侍です。妻が結核を長く病んで亡くなり、その際の借金に追われ、残された二人の幼い娘と惚けた老母の世話を一人で担っています。そのため、下城の刻には上司同僚の誘いも断り、家事と内職、自給自足のための野良仕事に励む日々を送っているのです。格好にかまうヒマもなく、風呂にも入らず、同僚には侮蔑され上司には叱責されるのでした。

それでも、清兵衛のたたずまいは、静かな充足感に満たされているようにおだやかで、彼自身、自分を幸せだ、というのです。娘の成長、畑の作物の生長、それらを日々見つめられる充実した毎日だ、と。

ここにあるのは、「ほんとうに大切なもの以外、なにもいらない」という腹のすわった覚悟です。

そんな清兵衛も、たまたま小太刀つかいの名手だったことから藩の権力抗争にまきこまれ、理不尽な討伐を任ぜられるのでした。

物語は、徹底したリアリズムで描かれるその討伐に観客の心を波立たせつつ、幸福な大団円に落ち着くかと思われるのですが、ラストは、清兵衛の老いた娘の口から、「侍の時代が終わったら百姓になりたい」と言っていたのに武士として死なねばならなかった、その後の彼の運命が語られるのでした・・・それでも、最後に、娘は、父の人生は満ち足りていたと思う、と言うのです。

「個人は、いつもその時代の犠牲者だ」と詩人金子光晴は唱いました。それでも、幸せだったといえる人生とはどんなものなのでしょうか。

先日、「なんで山なんか登るの?」と人に聞かれました。その時は、万感の思いがあって答えられなかったのですが、今この映画を思うと、ひとつだけここで言い得るような気がします。たまに、生きるのに必要最低限のものだけこの肩に全て背負って山に入る、そのことで、自分にとって、ほんとうに大切なものは何か思い出せるんじゃないか、と。人生は無駄な部分にこそその豊かさがあるのかもしれませんが、ときどきは、そぎおとしてそぎおとして見えてくるものもあるんじゃないか。

この「たそがれ清兵衛」は、山に登らない人たちにも、そんな気持ちを一瞬抱かせてくれる効果があるかもしれません。クロサワというより小津安二郎的な地味な侍映画ですが、自分を見失いそうになった時、是非おすすめしたい珠玉の佳品です。

投稿者 administrator : 22:44

2004年03月01日

逞しき我がアロワナ

オイラはアロワナ。現在体長35cm、成長期にある。

現在のご主人に引き取られ、半年が過ぎる。今は健康状態に戻ったが、3ヶ月前、一時死にかけた時がある。初めの頃、オイラが肉食で獰猛なこと、無理やり引き取ることになったこと、さらにご主人は金魚飼育しか経験が無く熱帯魚が初めてということで、あまりかまってもらえなかった。おかげで水替えもサボられ、オイラは濁った水の中でじっと耐えていた。約2ヶ月が経ち、水も相当悪くなってきた。それでもフン掃除役の底層魚、コリドラスと同居していることで安心し、一向に水替えをしなかった。

ところが、ある日、あまりの水質汚濁により同居しているコリドラス2匹が次々に死に、ついにオイラの眼も白く濁ってきた。『目が見えない。何とかして!』そのうちに全身に白斑点ができ、体力も無くなってきた。泳ぐこともできず、水底でじっとしているのが精一杯であった。勿論餌を食べる元気も無い。体がだんだん弱まっていく。

こうなると、さすがにご主人はオイラのことを心配してくれ、知り合いの魚研究家に相談した。アロワナのように肉食類の餌を与えている場合、フンにも動物性たんぱく質が多量に含まれるため、水が濁り易いこと。PH値が極端に悪くなると魚の目が白くなること。いったん白くなると回復に時間が掛かること。水質管理をきちっとやることが大切なこと等詳しく聞いてくれた。

直ちに水槽の水替えをやってもらったが、オイラは既に危篤状態であった。一日目が経ち、二日目が過ぎ、三日目もだめ。動く事ができない。自慢の2本の触角も無くなってきた。このまま死ぬのか。次はオイラの番か・・・。

するとご主人はオイラのために、生餌のめだかを用意してくれた。魚研究家より生餌ならば食べる可能性があると聞きつけ、近くのペットショップで買ってきたのである。4日目のこと、オイラが動けないことで、めだかは安心したのかオイラの周りを泳ぐようになった。オイラは全身の力を振り絞り、めだかを捕らえ口に頬張った。生きる事への執念で餌を口にしたと思う。こうして5日ぶりに食を取り、死から脱出したのだ。

オイラがめだかを食べる光景を見たご主人は嬉しさを全身で表現し、家族の居るリビングに走り出したのを覚えている。たかがオイラが餌を食べただけなのにこんなに喜ぶなんて・・・。

オイラは餌を食べ始めると大量のフンが出る。するとご主人は1日置きに掃除をしてくれるようになった。そのために早起きしてくれる。毎回、お湯を沸かし水温を25℃に調整した水を水槽の上から注ぎ込む。その甲斐有って、約2ヶ月でオイラの目も正常に戻り健康を取り戻すことができた。

最近、オイラはこのご主人を好きになった。餌を貰うとき、いぬのように尾っぽをぐるぐる廻してご主人に近づくようになった。ご主人も嬉しそうに優しい顔でオイラを見てくれる。命を助けてもらったご主人のために長生きして恩返しをしたいと思う。

ただ、今は餌を多く食べるせいか、かなり大きくなり、60cmの水槽が狭くなった。少しわがままかもしれないが、もう少し大きな水槽で泳げればいいな・・・。
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投稿者 administrator : 22:45